60年代の残滓 ― 2009/10/11 19:22

60年代の高度成長期に国民車として売られていたこの車はスバル360という軽自動車です。窓からボディのパネルまでなめらかな曲線で構成されていて軽自動車といえども流麗です。わたしが生きてきた時代を10年区切りで比べると60年代をいちばん懐かしく思います。自分にとってのその時代はまだ欠けているものがない幸せな時代であったと思えるからです。テレビ番組も楽しかったし、子供向け雑誌はSF的な未来図にあふれていました。両親はまだ若かったし、その暮らしや家族の絆に終わりの日など来ないと思っていました。たしかに世の中は騒がしかったけれど戦争も政治も子供には無関係でしたし、そんなことより日曜日に銀座のデパートでランチを食べることのほうが遥かに大問題でした。外食という習慣は当時はなかったし、国旗旗めくお子様ランチは休日の特別な食べ物でした。
この車は自転車で鳥を見ながら川縁を走っていてみつけたのですが、古いお宅のガレージ前に忘れられたかのように置いてありました。ガレージには同じ時代の大きなセダンも見えました。動かないのかも知れませんが、きっとその家族の思い出がたくさん詰まっているのでしょう。大切にされているぼろい車にはその理由があるはずです。わたしの愛車のミニも10年を過ぎました。事故で全損扱いと言われても直して乗り続けてきました。
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